- なに
- I
なに(連語)〔上代東国方言。 上代における打ち消しの助動詞「ぬ」の未然形「な」に助詞「に」の付いたものか〕…ないで。 …ずに。
「あぜといへかさ寝に逢はなくにま日暮れて夕(ヨイ)なは来(コ)~明けぬしだ来る/万葉 3461」
〔この語の成立については, 上記のほか, 上代東国方言の「なな」の転, その他の説がある〕→ なな(連語)IIなに【何】※一※ (代)不定称の指示代名詞。(1)どういうもの。 どういうこと。 (ア)名前や正体がわからない物事をさして問う語。「人間とは~か」「それが~か知っている」(イ)どれが相当するのか, はっきりしない物事をさして問う語。 「~がほしいの」「~をたべよう」「あいつに~ができる」
(2)その名の思い出せないもの, 名をぼかしていう必要のあるものをさす。「~はどうした」「~を~しよう」
(3)ある物事を挙げ, その他のものすべてをさす。「水も~もない」「お金も~もいらない」
※二※ (副)(1)(下に打ち消しの語を伴って)何ひとつ。 全く。「~不自由ない生活」「~気兼ねなく暮らす」
(2)原因・理由などの不明のときの納得のいかない気持ちを表す。 なぜ。 どうしてまた。 どういうわけで。「春霞~かくすらむ桜花/古今(春下)」
※三※ (感)(1)驚き, 怒りやとがめる気持ちなどを込めて聞きかえすときに用いる語。「~, 成功したって」「~, できないだって」「~, もう一度言ってみろ」
(2)相手の気持ち, 特に, 心配・懸念などを軽く打ち消すときに用いる語。 いや。「~, 大したことはない」「~, 構うものか」
(3)呼びかけるときに用いる語。「~, お小性衆, 若殿様のお入を神主方へ/歌舞伎・韓人漢文」
→ 何か→ 何が→ 何と→ 何も~が何(ナン)だか内容・筋道などが全く理解できないさま。「事故の時は, ~さっぱりわからなかった」
~から何までいっさいがっさい。 すべて。 何もかも。「~ひとの世話になる」
~食わぬ顔知っているにもかかわらず何事も知らないような顔つき。 そ知らぬ顔。「~でうそをつく」
~するものぞ何ができようか, 何もできはしない。 恐れることはない。「敵軍~」「悪天候も~」
~ならず何ほどのことでもない。 物の数ではない。「~ぬ草木の色もあはれなり/新葉(雑中)」
~にしても他のことは別にしても。 とにかく。 なんにしても。~にせよ何にしろ。 なんにせよ。~にも増(マ)してほかのどんなものよりも。「~健康が大事だ」
~は扨置(サテオ)きほかのことはひとまず後まわしにしても。 まず第一に。「~ひと休みしよう」
~は然(シカ)れほかのことはさておき。 何はともあれ。「まあ, ~, 二日酔ひの迎ひ酒とは/歌舞伎・韓人漢文」
~はともあれほかのことはどうでも。 ともかく。「~, 無事でよかった」
~は無くともほかのものは全くなくても, そのものだけは欠かすことはできないという意を表す。「~団欒(ダンラン)のひとときが欲しい」
~はに付けて万事につけて。 何かにつけて。「~便りなく思ひ参らせ候へば/浮世草子・禁短気」
~はの事(1)すべてのこと。 万事。「数ならで~もかひなきになどみをつくし思ひそめけむ/源氏(澪標)」
(2)なんのこと。 どんなこと。「津の国の~かのりならぬ遊びたはぶれまでとこそきけ/後拾遺(雑六)」
〔和歌では地名「難波(ナニワ)」にかけて用いられる〕~も彼(カ)もあれもこれも。 すべて。→ 何も~や彼(カ)やいろいろ。 あれやこれや。 なんやかや。「~(と)忙しい」「~(と)口うるさい」
~をか言わんや何を言おうか, 何も言うことはない。 おどろきあきれて言うべき言葉もない。~を隠そう何も隠すつもりはない。 思い切って真実を述べる前に言う語。「~彼がその人です」
~をがな何か適当なものを求めるさまにいう。 何かを。 何物かを。「~と望みける程に/仮名草子・伊曾保物語」
Japanese explanatory dictionaries. 2013.